奈良の春日大社の秋の恒例の行事といえば「鹿の角切り」が有名ですね。
この鹿の角切りの映像を見た人の中には「かわいそう」と感じる人もいるようです。
大勢の人間で鹿を追いかけまわして押さえつけて角を切る・・・。
確かに動物虐待じゃないの?と思う人がいても不思議じゃない光景ですが「鹿の角切り」は江戸時代から続く伝統行事です。
ちゃんとした理由があるので順番にご紹介しますね。
鹿の角切りをする理由は?
まずは鹿の角切りの様子を動画でご覧ください。
まるで鹿を追い込んで人間が楽しんでいるようにも見えますが鹿の角切りは人間と鹿が共生するためには絶対に必要なことなんです。
奈良の鹿の角切りをする理由は発情期の雄鹿が人間を傷つけるのを事前に防止するためなんです。
また、オス鹿同士で傷つけあうのを防ぐのにも役立っているんですね。
普段はおとなしい鹿ですが10月ごろの発情期の鹿はかなり気性が荒くなります。
実際に江戸時代の奈良の住人が雄鹿の被害に頻繁に遭うようになったことをきっかけに1672年(寛文12年)に事故防止のために鹿の角切りが始められました。
奈良の鹿は天然記念物に指定されている大切な動物です。
映像を見ると鹿を取りをさえた後、鹿の体が傷つかないように「ゴザの上」に寝かせています。
よく見ると枕まで用意されています。
奈良の鹿は神の使い「神鹿」とされてきたので粗末に扱わないように鹿に対する気遣いなんでしょうね。
鹿同士で傷つけあったり、人間に危害を加えないように保護するために300年以上も鹿の角切りは行われているんですね。
鹿の角切りは痛いんじゃないの?
もう一つ心配なのが鹿は角を切られても痛くないのか?ということですが、結論から言うと鹿の角には血管や神経はないので爪を切っているのと同じように痛くありません。
「でも、鹿の角には血管が通っているって聞いたことがある!」という声が聞こえてきますが実はこれも正解です。
鹿の角は時期によって状態が変わっていくのです。
鹿の角は角切りをする、しないにかかわらず「3月ごろ」に自然に落ちます。
これを落角(らっかく)と言います。
角が落ちた後は血がにじんでなんとなく痛そうです。
でも、この時期に生え変わっていくことで毎年少しずつ立派な角に成長していくので「落角」は大事なことなんです。
その次の段階として
4月~8月初旬頃まで産毛に覆われた丸い角が生えます。
この段階の角は血液も通っていて切ると出血して大変なことになります。
触るとほんわか温かく不思議な感じの角です。
その後
8月中旬ごろから10月ごろまでに角の皮が破れて白っぽい角が現れ完成形の角になります。
鹿の角切りが行われるのはこの状態の角の時です。
この時期の雄鹿はしきりに角を木にこすりつけたり、オス同士で角を突き合わしたり行動が攻撃的になってきます。
下手に近づいたりすると威嚇してきますので本当に怖いです。
この時期の角は既に血液も通っていないので爪を切るのと同じで全く痛くはないんです。
普通はこの状態で冬を越して翌年の春に上の写真のように角が自然に落ちるのですが、奈良の鹿は人間に害を与える前に角切りをします。
切った角は「奈良の鹿愛護会」のホームページで通信販売で販売したり鹿の角のストラップ作り体験などにも使われています。
角きりで得た収益は鹿の保護のための費用として役立てるそうです。
こんなふうに無駄に角を落としているわけでなく鹿の角切りは「人間と鹿双方の為に必要」なことなんです。
鹿の角切りの開催の時期や混雑は?
鹿の角切りが開催される時期は毎年、体育の日(10月第2月曜日)をからめた「土・日・月」の3日間に固定されています。
具体的な時期、日程、入場料など以下に紹介しておきます。
- 日時・・・10月の体育の日を絡めた「土、日、月」の3日間
- 時間・・・12:00~15:00(開場11:30 最終入場14:30)
- 場所・・・春日大社境内(鹿苑)
- 入場料・・・大人(中学生以上)1000円 子供500円
鹿の角切りは1日に5回行われます。
1回に見学できる人数は約700人ぐらいで完全入れ替え制で行われます。
やはり早い回の1回目、2回目あたりは混雑していますが、最終の5回目は比較的すいているのでゆっくり見学したい場合は狙い目です。
完全入れ替え制のため3日間で約1万人も見学できるわけですが、1年に1回きりですので見たいときに見れるわけでもありません。
300年以上の歴史のある鹿の角切りは1度ぐらいは見ておきたい奈良の伝統行事です。
まとめ
奈良の鹿の角切りは
発情期のオス鹿が人間に危害を加えないようにあらかじめ危険な角を切っておくことが目的です。
人間と鹿が共生するには絶対に必要なことなんですね。
また、角切りをする秋の鹿の角には神経や血管などは通っていないので痛くもなんともないのでそこは安心しても大丈夫ですよ。
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